のれん分けの勧め

昔日本には「のれん分け」というすばらしい制度があって、賃金問題、退職金問題、事業継承問題、忠誠心問題を旨く
解決していた。年初に当たって年金と暮らしについて考えてみると、今こそこの制度が見直されるべきではないかと思
われてくる。経営者の皆様は従業員の暮らしを立ててやるために(制度の変化に応じて、雇用条件の見直しが必要にな
るがその参考に)、従業員の皆さんは自分と家族が終生暮らしに困らないような準備をするための参考にしていただき
たい。(参考資料概算試算結果

1)概算試算条件
  サラリ−マンは大卒後22歳で就職して35歳まで月30万円(賞与及び会社負担年金保険料を含む,以下略)、35歳か
  ら50歳は月40万円、50歳から60歳は月35万円、60歳で退職金 400万円で退職して月16万円(時給1000円)のパート
  として65歳まで働き、65歳から80歳は年金生活にはいる。自営業者は22歳に起業し、月25万円で80歳まで働くもの
  とした。生活費は独身で月18万円、夫婦で23万円とした。年金の計算は最終的な姿とされている数値を用い、税金
  や細かなその他事項は無視した。

2)独身のサラリーマン
  バリバリと働いている間は余裕があるが、年金の額は現役世代の50%どころか自分の平均標準報酬の50%にも満た
  ないため、年金生活に入ると生活は厳しい。80歳までパートとして働くことが出来れば何とかなるが働く場は多く
  はないし、いずれにしろ十分な蓄えをしておく必要がある。年金収支が 500万円弱の赤字である点が気に入らない
  が、かといって年金として支給される2700万円弱を貯蓄で準備するのは難しいから、「それだけでも備えられる」
  ということで諦めるしかない(保険料を払わずに年金を貰う専業主婦(3号被保険者)の制度や、その他の無駄遣
  いのツケを払わされている)。

3)独身の自営業者
  いくらでも収入を増やすことが出来る可能性があるという点を無視すれば、自営業者の経済的余裕は、サラリーマ
  ンがバリバリと働いている間は見劣りがするが、尻上がりに改善され、仕事を続けることが出来れば、65歳以降は
  余裕のある生活を送ることが出来る。

4)35歳で結婚したサラリーマン
  3号被保険者の制度により専業主婦が保険料を払わずに年金を貰うから、夫婦の収支は年金生活に入ってもプラス
  に転じる。年金収支も大幅に改善して不満はない。60歳から65歳に苦しい時期があるが、既に子供が独立していれ
  ば二人して働けるし、夫婦が元気で離婚などをされなければ何とかなるだろう。ちなみに3号被保険者の制度がな
  くなると、独身サラリーマンと独身自営業者の年金収支を足したものが夫婦の年金収支となるが、夫婦の年金収支
  は約 120万円の赤字となってやはり不満が残る。

5)35歳で結婚した自営業者
  結婚しても収入が増えなければ、保険料負担と生活費の増加で、経済的にはさらに厳しくなる。しかし60歳までを
  何とか凌げば、65歳以降はさらに余裕のある生活を享受することができる。

6)サラリーマンの「のれん分け」
  古くは「のれん分け」という制度があって、これが奉公人のやる気の源であり、退職金であり、次の代の経営者に
  は目障りな先代の番頭にお引き取りを願うための方策でもあった。この制度を導入し、60歳で一部業務をのれん分
  けした場合、35歳で結婚し60歳で「のれん分け」して貰って自営業者となったサラリーマンは、例え退職金を貰わ
  なかったとしても、65歳以降の収支においても、生涯の収支においても、年金の収支においても全く不満がない。
  年金制度は早晩見直されると信ずるが、それのみに命運をかけるのではなく、日本の知恵でもある「のれん分け」
  制度がもっと見直されても良いのではないだろうか。