偽装請負摘発

数ヶ月前から偽装請負の摘発が厳しくなり、私が関与する会社でも1社が是正勧告を受けた。偽装請負契約を本来の派遣契約に代えれば済むこと(実際にそれで急場を凌いだ)だが、派遣元で社会保険に加入させなければならなくなる(法律に従えば請負契約でも加入させなければならないが、請負契約であるから違法行為がばれない)という理由で時給が高くなり、結果として、高卒の新入社員よりも時給が高くなってしまうところが悩ましい。

1)何故偽装請負か
  そもそも労務費の削減で売上の減少を相殺しようという発想が失敗の始まりだ。歯を食いしばっても雇用を守らなくてはならなかっ
  たし、安い外国人労働者に逃げるべきではなかった。次いで「仕事が増えれば人を増やせばいい」という発想と、「仕事が減ったら
  すぐにクビにしたいし、賃金は安ければ安いほどよい」という想いと相まって外国人の派遣社員を普及させた。しかし、派遣会社へ
  の監視が厳しくなり、派遣社員も不足するようになると、怪しい就労資格である外国人を保険に加入させずに使用しなければ儲から
  ないようになり、それが、規制のない請負契約(実態は偽装請負)に走らせた。

2)求人とパートの募集
  安易に偽装請負に走ったが、その取締が厳しくなってみればいつまでもそんな不確実な人材に頼っているわけにはいかない。派遣の
  単価も高くなり、計算して見れば新卒社員を雇った方が安い。需要が増えれば値段が上がるが、派遣は中間で搾取する者がいるのだ
  から、それのいない一般社員よりも高くなるのは当然の帰着である。それを悟った経営者は求人に取り組むが、派遣に走った期間に
  失われた次の3点が痛い。一つは新卒の求人を手控えたために学校とのつながりがなくなっていること。もう一つはパートがいない
  (口コミによる求人が期待できない)こと。最後は社員の満足度を高めるノウハウがないこと。それでも安易な解決方法はない。根
  気よく求人活動を続けること。社員を大切にして定着率を上げること。寮を完備して遠方からの就職を支援すること。託児施設を完
  備して若い主婦が安心して働けるようにすること。求人ノウハウを身につけること等々、正攻法で対処するしかない。

3)研修制度
  教育の堕落と相まって、若者が使い物にならなくなったのも事態を複雑にしている。求人しても使える日本人が集まらないのだ。そ
  れでか研修制度という新たな派遣制度が流行っているが、どこまで逃げるのだろうか。その末路は想像できるし、派遣業者はそこで
  短期間に荒稼ぎして逃げることしか考えていない。ある会社の中国人女性に会社は20万円近くを支出しているが、当人は15,000円し
  か受け取っていない。それで「昼の会社の給食が食べられない」との話を聞いた。こんなことで良いのだろうか。私は「日中友好事
  業だと考えて研修生に優しくしてやってください」とお願いしている。臨時の必要を満たすことは必要だが、それを「おいしい話」
  だと位置付ければ、やがてまた同じように臍を噛むことになるだろうと、私は心配している。

4)トヨタという先生
  平均800万円以上の平均賃金を支払ってもなお空前の利益と売上を上げている企業がある。それがトヨタだ。「トヨタでも長時間残
  業や残業手当の不払いがあったじゃないか」と仰るかも知れない。しかし、トヨタの社員に聞いてみれば分かる。殆どの社員はトヨ
  タの社員でいられることを幸せだとと感じている。それが法律違反なら法律の方がおかしい。何故なら法律は国民の幸せのためにだ
  けあるものなのだから。トヨタも「組合(イデオロギー付の組合)」に泣かされた時期があったようだが、今は組合の力も弱まって
  みんなが幸せになった。労使の本当の敵はダラリであって経営者や労働者ではない。そこに気付けば、労使のウィンウィンの関係が
  成立する。トヨタの苦悩と成功を紹介した本は多いから、是非読んでもらいたい。