やる気の源は十人十色?

金に執着する人、地位や名誉に執着する人、仕事のできばえに執着する人等々、執着の対象は十人十色です。また、若い頃はやる気がなかったけれど、子供が私立大学に通うようになって目の色が変わったというふうに時期によって執着する対象が代わることもあります。その一人一人、人生のステージ毎に異なる執着対象を刺激してやればやる気を発揮させることができそうです。しかし、少なくとも会社が提供できる金や地位などには執着心が少ない人のやる気はどう引き出せばいいでしょうか。或いは、金はこれ以上出せないとか地位が空いていない場合にはどうすればいいのでしょうか。それを考えてみたいと思います。

1)神様的社長
  もしも社員が社長を神様だと感じれば、信者はそのどんな命令にも全身全霊を掛けて従うはずです。無論、本物の神には成れません
  が、経営の神様にならなれるかも知れません。例えば、米沢藩の財政を立て直した上杉鷹山は滅私奉公、穏やかで愛情にあふれてい
  るが芯は強い、決して諦めずアイデアで乗り切る、筋が通らないことはしない等々の特質を備えていたようです。興味のある方は小
  説をお読みください。(「小説 上杉鷹山」ISBN:4087485463,集英社 (1996-12-20出版),童門冬二著)

2)次郎長的社長
  森の石松、大政、法印大五郎などに代表される子分は清水の次郎長親分のためには命をかけました。つまり、社長が敬愛される親分
  で、社員が親分を敬愛する子分である関係を構築できれば、理屈抜きに、社員は社長のために命をかけるはずです。「男心に男が惚
  れて・・」という心理状態です。次郎長についてはよく知りませんが、喧嘩に負けない(仕事では誰にも負けない)、子分がやられ
  れば必ず敵をとる(部下の失敗をフォローし、必ず挽回させる)、筋を通す(全ての行動・判断が武士道にそっている)等々の特質
  があったものと思われます。

3)良き親的社長
  良き親に対して子供は敬愛の情を抱き、親に孝を尽くそうとします。全ての社長が神様や大親分には成れないとしても、従業員に対
  して良き親的な存在には成れるかも知れません。良き親は子供の健やかな成長を第一に考え、決して優しいだけではなく、厳しいだ
  けでもなく、子供を守るためには何でもし、しかし子供に見返りを求めません。社長に置き換えれば、あるときは厳しく、またある
  ときは優しく、社員の成長を第一に考え、社員にピンチが訪れれば何を置いてもそれを助け、しかし恩着せがましくはしないという
  ことになるのかも知れません。

  特に「成長」というキーワードは重要だと思います。仕事を教えてもらい、失敗したら励ましてもらい、力不足をフォローしてもら
  い、やっと仕事に成功すれば一緒に喜んでくれる。自分はその成功が嬉しく、成功した自分が誇らしく、その先生に感謝し、いつか
  その恩に報いようと考えます。そして月日が経ち、多くの先生の恩を受けて、仕事にひとかどの自信も付き、社内外から一目置かれ
  る人物になれば、自分を育ててくれた多くの先生(=会社)に感謝し、その恩に報いようと考えます。そんな大先輩が報恩のために
  若者を育てようとして若者に接すれば、その感謝の気持ちが若者に通じ、社内に「この会社のために頑張ろう」という雰囲気が充ち
  満ちます。一生懸命に育てれば健やかに育つとは限りません。社長の身持ちが伝わらないこともあるでしょう。でも、根気強く、分
  け隔てなく育てるための努力をする社長を多くの社員が敬愛するようになるだろうと、私は思っています。