仕事給

目標計画管理とセットで仕事給の導入も進みました。しかし目標計画管理が客観的な評価制度としては機能していない以上、仕事給も期待されたほどには効果を発揮していないようです。

1)仕事?
  担当職務の職域がはっきりしない日本の会社では、そもそもその個人の「仕事」がはっきりしません。それで、目標計画管理制度で
  職域をはっきりとさせようとしたのですが、そうしない方が業務遂行には好ましいと分かって、仕事給もその本来の使命を終えまし
  た。

2)仕事給の功罪
  罪は、勿論、期待したほどの効果を発揮しなかった(納得性の高い賃金決定の切り札にはならなかった)ところにあります。しかし
  その導入により、結果的に、多くの功がもたらされたのも事実です。@硬直化した年功給を見直すきっかけになりました。A賃金制
  度をスッキリとさせて管理しやすくしました(技術手当、住宅手当、扶養手当、精勤手当などにより予期しない賃金格差を生じるこ
  とを防止できる)。B役職に関係なしに基本給を上下させることが容易になりました。C高止まりしていた賃金に格差を付けること
  ができるようになりました。

3)生活給と年功給
  賃金には生活給(生活を維持するために必要な給料)という側面があります。例えば20代は20万円でも暮らせる。30代は結婚して子
  供ができるから30万円は必要。40代は家を建てたり、子供が大学に行ったりで40万円は必要。50代は子供が独り立ちするので30万円
  で暮らせるとすれば、例え仕事給であるにしろ、その必要な金額は最低額として保証してやらなければ従業員は安心できません。こ
  の場合に問題となるのは支給できる金額とその生活に必要な金額に大差がないということです。そんな状況では、完全な仕事給の導
  入は、初めから無理だったのです。しかしそれでは、従来の年功給のままで良かったのかと言えば、次の2点の理由により、そうで
  はなかったと思います。@イレギュラー(若いのに高額な賃金を支給したい人や止めてほしい人など)に対応しやすい。A「実績と
  は関係なしに、給料は必ず上がるものだ」という認識を変える助けになる。

4)究極の仕事給
  どのようなシステムを採用したにしろ、給料を支払う限り、その金額に対する不満はなくなりません。従業員には「世間並みの給料
  をもらって当然だ」という甘えがあり、経営者には「ろくな仕事もしないで人並みの給料をもらえると思うなよ」といった責任転嫁
  (どのように働かせるかは経営者に託されている)があるからです。それを生じない究極の仕事給は業務委託関係(従業員は個人事
  業主で、会社は発注元として業務を発注する関係)ですが、それを徹底すれば、会社はバラバラになってしまいます。結局、会社と
  してのまとまりを保ちつつ給料への納得性を高めるには、単に評価・計算システムをいじるだけではなく、世間並み、情報開示、十
  分な説明、権限委譲、表彰制度などを組み合わせて行うしかないということではないでしょうか。