目標計画管理

モラルサーベイが廃ること、次は目標計画管理が流行りました。私の勤めていた会社でも、新しい総務部長は目標計画管理的なシートの記入を決めました。当時特許出願もやっていた私は、「特許出願20件」という目標を書かされましたが、無論、技術の人間は誰も協力してくれません。そこで、開発も兼務していた私は、自分で25件を出願して目標を達成しました。それでか沢山のボーナスをいただきましたが、何か申し訳ないような気がしたことをを思い出します。

1)目標達成度の評価
  目標計画管理制度を導入した多くの会社は、「折角導入したのに客観的な評価ができない」という理由で導入を取り止めるか、客観
  的な評価を諦め、形式的にシートを作成させて満足しています。この失敗(そんな些細なことに大金と多くの時間を費やしてしまっ
  たという失敗)の責任は、それが客観的な評価を可能にする手法であると誤解したところ(それで金儲けを企んだコンサルタント)
  にあります。そもそも、職務範囲が明確でないことを強みにしてきた日本企業にチェックシート式の評価を無理強いすれば、強みが
  損なわれ、弱みは改善されず、「何か違うんじゃないか」という居心地の悪さだけが残ります。

2)それでも目標計画監理制度
  目標計画管理制度を導入した多くの賢明な会社は、「それによって客観的な評価が可能となる」という幻想を捨て、PDCサイクル
  のOJTツール及び上司の恣意的な評価の補助手段として目標計画管理制度を続けています。それは、目標計画管理制度は、それを
  評価システムとして使用しなければ、「日本的」の弱点である「経緯を記録しない」、「結果を数値で検証しない」などの改善に効
  果があるからです。

3)煩雑な評価基準は必要か?
  私は目標計画管理には細かな評価基準はいらないと思います。プロは結果責任を負うものであるとすれば、例えば、その目標は「売
  上ナンボ」、「付加価値ナンボ」、「開発終了」のみで良い訳ですから、管理の煩雑さに挫折することはあり得ません。他部署への
  応援などは自部署の円滑な業務遂行に必要な範囲内でお互い様です。そのこと自体を敢えて評価しなくても「旨く立ち回ったかどう
  か」は自部署の成績で評価できます。

4)何故本人に書かせるのか?
  目標計画管理でもう一つ不思議なのは「管理目標は本人に書かせなければならない」という常識です。計画の達成度で評価をするの
  であればそれは会社が示すべき基本計画で、本人が考えて実行すべきは行動計画であるのにそれが混同されているように思うのです
  が如何でしょうか。そこに矛盾があるので、上司が記載内容を誘導しなくてはならないことになり、本人は責任だけを押しつけられ
  ているように感じてしまいます。もう一つの不思議は、期初に行動計画を書かせることです。行動計画は状況に応じて日々見直さな
  ければなりませんし、実際に見直されています。そうすると期初に書いた計画との整合性がとれなくなりますから、計画は差し障り
  のないこと(=会社にとって大切ではないこと)に終始せざるを得なくなり、「何でこんな無駄なことをさせるんだ」といった不満
  が残ります。これらも目標計画管理を形骸化させている一因であると思います。