モラルサーベイ

モラルサーベイが流行っていた頃、私の勤めていた会社でも、莫大な金を掛けて新しい総務部長を招聘し、モラルサーベイと称する従業員意識調査を実施しました。結果として、組織も、人事も、制度も、社内の雰囲気すら変わらなかったので、多分期待した効果は得られなかったのだろうと思います。多くの会社でも同じような経験があるのではないでしょうか。

1)日本の文化
  日本企業の強みは阿吽の呼吸、相互扶助の精神、惻隠の情、不言実行、上を立てる、もったいない、拝金主義を軽蔑する、筋を通す
  などの日本文化のよいところが自然に組織運営に活かされてきたところにありました。しかし、日本全体が不況に陥ると、それを日
  本的経営手法に責任転嫁して西洋的経営手法導入の気運が高まり、しかし多くの会社が導入に失敗しました。その原因の一つには、
  外ならぬ日本人の心の問題を、文化の違う西洋の手法で解決しようとしたところにあります。西洋的なシステムは、そのままでは、
  多くの普通の日本人には居心地が悪いのでしょう。流石にモラルサーベイは廃れたようですが、しかし、賢い会社においては、西洋
  の手法のよいところを日本風にアレンジして経営の近代化に成功しています。それなどは、何でも日本風にアレンジして取り入れて
  しまうという日本文化の典型です。

2)従業員意識調査
  会社は経営者と、その志を同じくする一部の従業員に都合のよいシステムで運営されるべきであるのに、無記名のアンケート調査を
  実施して、その平均点を上げようとする発想自体が無意味です。また、真剣に会社と関わっていれば、そのメンバーの間では親子兄
  弟のような関係が芽生え、正に阿吽の呼吸で相手が何を考えているのか分かります。真剣に会社と関わらせるためにモラルサーベイ
  を行うのだとの反論には、アンケートをしている親子などいないと、さらに反論できます。

  ちなみに、その少し前には「目安箱」なる消極的なモラルサーベイが流行りましたが、これも今では廃れたようです。だいたい、匿
  名でたれ込まなければ問題を解決できない、そんな会社のありようが問題なのだと気付いたのでしょう。トヨタの渡辺社長は、その
  インタビューの中で、「上司と部下は仲良く喧嘩しろ」という考えを強調しておられますが、これなどは大変にわかりやすいし、日
  本的な(昔の親方と弟子の関係を彷彿とさせる)すばらしい手法であると思います。