定額払制を併用する

例えば、概ね30時間の残業が必要な業務に従事する者に対して、例え残業をしなくても30時間分の残業代は払うから、なるべく早く業務を終えて帰宅するようにと指示し、残業時間を減らそうという制度が残業手当の定額払制です。

1)視点を変える
  違法な長時間残業はさせてはいけないという側面を別にすれば、残業時間自体は経営には関係ありません。また、作業者の裁量で作
  業時間をコントロールできる業務はたくさんあります。そこで視点を変えて、残業代折り込み済で人件費を考えればその範囲内でい
  くら残業しようとも経営的には影響なしということになります。作業者も、早く仕事を終えて帰宅しても所定の残業代はもらえるわ
  けですから、普通の考え方をする人ならば、早く仕事を終えようとします。それで結果的に長時間残業が抑制されるわけです。

  定額払の残業代込みで基本給を設定すれば、結果として残業代の不払いになるのではないかとの指摘があります。しかしながら、残
  業代が経営を圧迫すればボーナスが減るだけですし、必要な売上を確保できないにもかかわらず高い給料を払い続ければ会社が潰れ
  るだけなのです。他方、この制度を悪用して基本給を低くすれば新しい従業員が集まりませんし、今いる従業員も離れていくでしょ
  う。実は、只それだけのことなのです。残業が多い少ない、残業代を払う払わないといった不毛な議論に終始するくらいなら、この
  制度も一つの対策手段でしょう。

  仕事のための仕事は経費を伴います。従業員は、会社にいるだけで経費(証明やトイレなど)を使います。労基法の8時間が適当か
  どうかは別にして、必要な仕事量が確保され、色々な意味で適正な人件費が設定されているのであれば、従業員を早く帰らせれば早
  く帰らせるほど会社は儲かるはずです。

2)定額払制の運用
  定額払制を導入しても、基準時間を超えて残業させれば、その超えた残業時間に対する残業手当は支払わなくてはなりません。つま
  り、通常であれば作業を終えられる時間を基準時間に設定しなくては、この制度は意味を持ちません。基準時間を超えた残業は一切
  禁止するというのも一つの対策です。

  既に適正な労働分配率を達成しているのであれば、仮にこの制度を採用しても、基準時間を短くする代りにその短縮した時間分の残
  業代を基本給に乗せる(基本給を引き上げる)方法や、担当業務を増やすがその分基本給を引き上げる方法などで、さらなる効率向
  上を図ることもできます。