ジ≠シ

(又はジジツはショーセツよりも≠也)



閉鎖です。
今までありがとうございました。




5番の話が個人的にお気に入りだったのでこれだけ残しておきます。





5.

薬缶をコンロにかけ、大きく溜め息を吐く。水を入れていなかったことに気づき、はっとする。心にぽっかり穴が空いたようだというのはきっとこんなことを言うのだろう。

あいつが出て行ったのはちょうど3週間前だ。バイトから戻ると、部屋の合鍵と一緒にレポート用紙に書かれた手紙が置いてあった。「これ以上あなたと一緒に暮らすことはできません。」その言葉以外には理由も何も書かれていなかった。電話をしてみたものの、着信拒否。彼女の親しい友人に電話をしても、異口同音に知らないというばかりだった。取り付く島もないとはこのことだ。

一人になったって別に困ることなど何もない。こうして薬缶を火にかければカップラーメンだって作れる。あいつのまずい飯よりもこっちのほうがよっぽどごちそうさ。

湯を注ぎ、割り箸を上に置いて待つ。あいつが出て行ってからは、毎日外食かコンビニの弁当、またはこんなカップラーメンで食い繋いでいる。いいかげんこんな食事にも嫌気が差してきた。
「ちょっとは自炊しなくちゃなぁ」そう呟いて、ガスの火力を上げた。

そういえばあいつの作る味噌汁は美味かった。家事はからっきしダメなやつだったが、味噌汁だけはなぜか上手に作った。大きさが不揃いの不細工なジャガイモがたくさん入った味噌汁だったが、不思議とくせになる味だった。朝はいつもこのちゃぶ台であいつと向かい合いながら食ったっけ。

そんなことを思い出したら、味噌汁が飲みたくてたまらなくなった。
「・・・よし、作ろう」
味噌汁なんか俺一人でも作れるはずだ。
「えっと、味噌は・・・よし、あるな。後はジャガイモか。ひとっ走りスーパーで買ってくるか」
俺はカップラーメンを作っていたのも忘れ、財布をつかむと外へ飛び出した。

「よしよし、買って来たぞ。さっそく作るとするか。えーっと、まず鍋に水を入れて、何するんだったかな。味噌を入れればいいのか?いやいや、ジャガイモを茹でるのが先か。あー、皮剥くの面倒くせえなぁ。まあいいや、そのまま入れてやれ」
ぶつ切りにしたジャガイモを鍋に放り込んだ。蓋をしてしばらく待つ。

「・・・そろそろ味噌入れてもいい頃かな。どれどれ。おっ、結構やわらかくなってるじゃないか。よし、ここで味噌投入。おおっ、結構美味そうじゃねえか」
独り言を言いながら、なんとか味噌汁は出来上がった。

俺は完成した味噌汁をお椀によそい、さっき買ってきたパックのご飯を並べた。
「なかなか朝食っぽいな。やっぱり日本人はこうでなくっちゃ。じゃ、いただきまーす」

「・・・・・あれ?」
記憶にあるあいつの作った味噌汁の味には程遠いものがそこにはあった。これはただの味噌味がついた液体だ。作り方を間違えたのだろうか。それとも、あいつの味噌汁には何か特別なものが入っていたのだろうか。

一人で作った味噌汁は、寂しさを倍増させただけだった。

その夜、なんとなくあいつに電話をしてみた。
「プルルルル」
無機質なコールが響く。やはり今日も出ないか。小さく溜め息を吐き、「切」ボタンを押そうとした。その時だった。

「もしもし」

久しぶりのあいつの声が受話器から聞こえた。慌てて俺は姿勢を正した。

「も、もしもし」
「もしもし。久しぶりだね」
「今日は着信拒否じゃないんだな」
「ああ、うん」
「元気か?」
「うん。そっちは?」
「なんとかやってるよ」
「ちゃんとご飯食べてる?」
「ああ。といってもコンビニとかばっかりだけどな」
「だめだよちゃんと体にいいもの食べないと」
「そういえばさ、今日俺味噌汁作ったんだ。でもお前みたいに上手に作れなくてさ」
「そうなんだ。どうやって作ったの?」
「え?ジャガイモ茹でて味噌入れてだよ」
「出汁はとった?」
「え、出汁?」
「私いつも最初にかつお節入れてたでしょ?」
「そうだっけ?」
「まったく、私がいないと何にもできないんだから」

俺はちょっと笑った。この台詞は今までに何度と聞いた言葉だ。今までの俺だったらここでムキになって「お前に言われたくねえよ」なんて怒ってたんだろうな。あいつが出て行ったのももっともだ。

「・・・・ごめんな」
「どうしたのよ急に」
「いや、あのさ、もう一度やり直せないかな」

彼女はちょっと黙ったあと、いたずらっぽく笑ってこう言った。

「とりあえずお味噌汁だけは作り直してあげるよ」








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京大、でんぷんにカツオだし加えた溶液に常習性発見  

京都大学大学院農学研究科の伏木亨教授、大学院学生の川崎寛也氏らは、 でんぷんにカツオだしを加えた溶液に常習性があることをマウスを用いた実験で 発見した。脂肪にも常習性があり、食の欧米化が進むなかで、日本食の代表的な 風味であるカツオだしのでんぷんを習慣づけることで、肥満の軽減に役立てられる 可能性もありそうだ。

実験では、マウスにさまざまな試験液を与えて執着を調べた。その結果、 「でんぷんだけ」「カツオだしだけ」では常習性は見られなかったが、「でんぷんに カツオだしを加えたもの」で常習性が現れた。そこで味覚の影響を調べるため 味覚神経を切断したところ、常習性はなくなった。脂肪についても味覚情報と脂肪が 持つカロリーの両方が常習性における重要な役割を果たしているという報告が これまでもある。  

川崎氏は「常習性は記憶のなかの食べたいものリストにリストアップされて起こるが、 これは高次の脳による働きが関係しており、エネルギーであるでんぷんの情報と、 タンパク質のシグナルである味情報などが加わることで記憶に残るようになるのでは」 と解釈している。



































mixiとかやってるんで暇な人は検索かけてください。では。