テイルズオブリバース レビュー

GCでシンフォニアを挟んで、デスティニー2以来のPS2テイルズ。
しかしその間にシンフォニアがPS2移植。
というワケで、今回は藤島対いのまたです(違う)


序章 テイルズオブリバースに対する不安と期待〜頂上決戦!!藤島康介対いのまたむつみ〜

見出しにも書いた通り、ファンタジアで藤島康介だったのに、以降いのまたむつみになり、ひとつ前のシンフォニアで藤島康介への原点回帰を果たしたテイルズシリーズ。今回はいのまた返り咲き。まぁシンフォニアがPS2に移植されたとはいえ、GC=藤島、PS2=いのまたの構図が確定ということなのだろうか?それがこのシリーズの痛手であることは間違いないと俺は思う。

…さて、発売前の見方としては、シンフォニアで確立されたマルチラインリニアモーションバトルを今回から擬似的に取り入れたスリーラインリニアモーションにしたことに対する期待であろう。今までシリーズ通して平行線上においてのみ展開されていた戦闘が幅広くなることは容易に想像できたし、それにより戦闘が楽しくなるのも確信できた。

反面、不安要素としてデスティニー2にあった特技体系の変更が今回もあること。デスティニー2やシンフォニアのレビューでも書いたが、シリーズ通しての「お約束」というのは、少なくとも俺は必要だと思っている。意図して変える部分、変えない部分の見切りができていないような気もする。

そういうのを含めて、以下本編。日記にも書いてきたけど、今回は辛いかも。

<後日談>

数日前にPS2でのテイルズ最新作「テイルズオブレジェンディア」が発表され、そのキャラクターデザインは藤島康介でもいのまたむつみでもない、新しい人、中澤一登氏でした。しかもこれはこれで超微妙。マーケティングって知ってますか?

1章 システム編〜斬って斬って斬りまくった結果〜

今回は大幅に変更がありましたね。スリーラインになったことで楽しくなった部分は多かった。けど、それと同じくらい、ヘタしたらそれ以上に問題点もあった気がする。テイルズの魅力である戦闘を中心に語るシステム編は以下。

1.スリーラインリニアモーションバトル

シンフォニアを除いて、今まで平行線上でのみ行われていた戦闘フィールドのラインを3つに増やした今回の戦闘システム。これによりシンフォニア同様の戦闘はできるようになったかなと。シンフォニアと比べて、範囲魔法に入りやすい(逃げやすい)というメリットもあります。このシステムにはさしたる問題はないので、そのまま評価したいと思います。

2.特技体系の変更とフォルスキューブ

今回も特技体系は大幅変更。変更というよりも一新ですね。さっきも書いた通り、物凄く残念です。ヴェイグのみ護符の付け替えで特技が虎牙破斬とかに変わるけど、基本的にはほぼ全部変更。そしてフォルスキューブの存在により、オート操作のキャラも4つしか特技を装備できなくなったフォルスキューブの8つの頂点を用いた特技性能の補正は良いと思うんだが、特にアニー。回復役のアニーに4つしか特技が装備できないのはとにかく痛い。毒でも何でも、状態異常を回復できる特技をその都度付け直す手間が発生してしまった。これが地味に面倒なのである。今まではリカバー一つでどうにかなったのだが、技ごとに回復できる異常が違う以上はどうしても付け替えなければならない。いちいちそういう手間をプレイヤーに取らせる意図が分からないんです。これが今までのように、オート操作なら全特技が使えるならそれでも良かったんだけどね。回復役としてのアニーに関しての詳細は後述。

奥義は2つの特技のスマッシュポイントを消費して覚える。スマッシュポイントはその特技を使って敵を倒せば増えるんだけど、それゆえにただ特技を使っていればいい前作までとは違って手間がかかるようになったかなと。まぁ、あっけなく奥義使えるようになるのも変な話なんで、そんなに嫌いなシステムではないけど。

3.回復魔法が存在しないことと料理の重要性

今回はファーストエイドを基点とした回復魔法に当たるものが存在しません。唯一回復魔法に当たるのがアニーの特技である弧法陣。弧法陣の上にいれば少しずつ回復するが、弧法陣はアニーがダメージを受ければ(ガードブレイク時)消えるし、基本的に自ら入る必要がある。自分はともかく、オートはそう自分の思う通りには動いてくれないし。そうやって固まるというのは敵に囲まれるということにもなる。それと自分が特技を使う時や敵を倒した時にも回復します。それゆえに特技を使うタイミングも重要で、つまり攻防一体化の今回のシステムは攻守の見極めが重要になったといえる。ただそれもちょっと過剰気味な気がしなくもない。攻めて攻めて攻めまくっていたハズなのに、何時の間にかHPがない。それなのに大幅に回復する手立てはない。立て直しが非常に難しいのです。まぁ戦闘中にアイテム使っても今回は称号などに関係ないので問題ない気もするけど、グレードには関係してくるしねぇ。

ちなみに、さっき「スリーラインになって範囲魔法に入りやすい(逃げやすい)というメリット」と書いたけど、実際味方にかける範囲魔法など存在しないので、あまり意味はないかと。弧法陣は自分の考え通りに発動してる事は少なく…というより、大して広くもないのにわざわざ入りに行くと逆にピンチになるのであまりアテにならないし。魔法も今回は通常防御が効くので逃げる必要もないし。

そして回復魔法がなくなったので、移動中の回復はアイテムか料理。アイテムは戦闘で使いたいのでメインは料理になります。そのためか今回は料理に失敗することはなく、安心して使えます。熟練度は存在し、上がる度に材料を増やすことができるようになる=効果の上昇や追加効果の発生などが起きます。シークレットファクターは良いですね。発生すると嬉しい。後半のレシピほど凶悪な効果が(笑)。ただその料理、悪くはないんだが面倒なのが食材の調達。街ごとに売っている食材が違うので(大体どれかひとつのレシピは作れるようになってるけど)、食材集めが面倒かと。料理がメインならどの街、もしくはどこかの街ひとつでもいいから、全食材が揃うくらいのイキオイがあってもいいだろう。マジカルポットだってどれだけ強化しても結局は運任せだし。食材費も意外にバカにならない。序盤では特に。金策もピーチグミやライフボトルを中心に考えるから、食材にかける費用もおろそかになりがちです。

4−1.TPの廃止とフォルスゲージ及びラッシュゲージの採用

今回は今まで術技を使用する際に必要だったTPが存在せず、事実上術技は使いたい放題。代わりにフォルスゲージがあって、術技はいつでも出せるが、フォルスゲージが満タンの時が一番攻撃力が高く、フォルスキューブの補正もかかる。そしてラッシュゲージ。分かりやすく考えるならキャラのテンションかな。ラッシュゲージが高い時は攻撃力が高くてHP回復率が低く、ラッシュゲージが低い時は防御力とHP回復率が高くなる。ラッシュゲージは攻撃するなどのアクションにより増減するが、自ら調整することも可能。戦局に応じて使い分けるためにも、基本的には中間を保つことになる。

…が、今回奥義を出すためには基本的にラッシュゲージが70%程度に高まっていないと出せないのです。だけど奥義を絡めて豪快に攻めているとHPが回復し難くなる。さっき書いたようにHPの回復手段が乏しい以上、こういう戦い方を続けることは今回はできません。だからといってラッシュゲージを低くして戦っていると時間がかかったり、操作が作業化してしまったりする。作業化という点に付け加えれば、自分でラッシュゲージを上げ下げさせた後は必ず攻撃が当たるので、これを基点に攻めることになるため、今回の戦闘は従来より作業的な感がするのである。

<今回の戦闘の流れ>

戦闘開始→ラッシュゲージの上下(基本的に上げ)→通常攻撃×3、特技、奥義の連携→距離を取ってチャージ、以下これの繰り返し

…と、プレイヤーの取れる手段が少ない気がするんです。それはオートも4つしか特技を使わなくなったので付け変える手間ができたことも含めてです。ちなみに奥義も単発では出せなくなってます。必ず特技から連携させる必要がある。

…以上のような点を持ちまして、俺は今回の戦闘が従来の作品ほど楽しいとは思えませんでした。チャージ⇔攻撃+特技がループするだけで自由にやれることが少ない。

4−2.回復役としてのアニーと戦闘の穴

前項からの続きになるけど、要するにアニーの能力が一番疑問。何度も言うように瞬時に回復する手段がないので、所詮は大した能力じゃないんです。弧法陣内に集まるなんてもってのほか。タコ殴りにされるだけだし、そうなれば弧法陣も消えるし。無論、敵の数が少ないならこれ以上ない能力ではあるんだけど。それと戦闘不能から回復できる能力はアニーの「ライズ・エリキシル」のみだけど、これ装備してた人っている?これ付けてるとフォルスキューブの能力が伸びないでしょ?他の特技に比べてあまり使わないから。で、これもさっき書いたけど、弧法陣ごとに回復する状態異常が違うことも含めて、今回の術技システムは全般的に穴だらけなんですよ。俺は元々オートに指示は出さず、自由にやらせてこそリニアモーションバトルの本質だと思ってる。だから今回特技ショートカットがなくなったのは別に何とも思わなかった(使用回数を伸ばす時は使ったけど)。だけど今回は主にアニーを中心として細々と特技を付け替えたりしないといけないので非常に手間を食う印象があった。

アニーが回復役というほどの存在だと思えないのは、結局そういう事なんじゃないかなと。奥義のヒール・レーゲンですら10%くらいの回復量でしょ。あんなちょこっとずつの回復ならラッシュゲージ一番下げた状態で特技出してるほうがいいくらいだもん。だけどそれだと奥義に繋げる、テイルズ戦闘の爽快感は損なわれるし、作戦で戦況を変えようとしても3つしか登録できないんじゃたかが知れてる。10個ぐらい作戦スロットがあってうち3つくらいを任意で登録できる、くらいのことをしてくれてもいいのでは?ボス戦の時だけそれを登録しなおしておくとかさ。

5.隊列と作戦

作戦は今まで通りだからいいとして、今回から大きな比重を占めるようになったのが隊列。メンバーの配置によってどれかのステータスに補正がかかったり、味方同士に影響しあったり。これはなかなか良いと思うんですが、やっぱり基本はHP回復になっちゃうんだよねぇ。ここでも回復魔法が存在しない事がせっかくのシステムを台無しにしている感アリ。

6.特技、錬術、導術、陣術

今回の術技はこの4系統。特技は今まで通りの存在。導術は魔術、陣術はアニーの弧法陣のことで、錬術はキャラごとの属性を反映したサポート術。実は錬術は結構重要。というのも単純にそれを使用した時のHP回復量が他の術技に比べて大きいのである。ラッシュゲージを最小にして使えば本当に今までのヒールくらいの効果はある。なので各キャラとも一つは装備しておきたい…がゆえに結局4つしか特技を使えないのがもどかしいのですよ。錬術装備したら取れる手段は3つだけだからねぇ。自分はともかく、今まで全技を使ってくれたオートは非常に頼りなく見える。つーか、唯一使わないL2ボタンを錬術スロットに割り振れば良かったんだよ。勿体ねぇ。

7.エンハンス、武具継承、イレギュラー

今回は戦闘終了時にエンハンスポイントというのが入り、それを消費してある程度武具性能を上げることができる。それによって特殊能力が覚醒するシステムは面白かったかな。武具を継承できたり、その際に発生するイレギュラーで全く違う武具になったりするのも。強いて言えば、もう少しポイントが多く入っても良かったかなぁ(2周目以降のグレードショップにて変更可能)。それとコンボが経験値じゃなくてこっちのボーナスになるのがちょっと残念だった。

武具といえば、今回は装備スロットが武器・防具・護符・宝石の4つだけになってしまった。それにより補正をかけられる項目も減少。せめて護符と宝石は2つずつくらい…ねぇ?

8.戦闘称号がなくなったこととグレード獲得

今回は戦闘に関する称号(グミ嫌いなど)が一切なくなりました。称号ボーナスもも入手した時点でその数字分強化されるんで、自由に使える。でもこれならシンフォニアみたいに衣装称号があると良かったのにな。

グレードも獲得方法が変わってますが、これはまぁどうでもいいかな…。今までみたいに減る事はないので、ランクを上げてプレイしておくと2周目以降のグレードショップで買えるものが増えてラクかも。

9.移動

一言いいですか?徒歩にせよシャオルーンにせよ、とにかく動きが遅いんじゃあっ!!はっきし言うよ。イラつくって。そもそもシリーズ通して…というよりどのゲームにしてもだけど、装備で移動速度が早くなるというシステムの意味が分からん。ロイドのパーソナルにせよ、ダッシュブーツにせよ。そういう手立てで早くできるようにするとかだったら、最初からそのスピードで動けるようにしろっていうのに。戦闘は仕方ないと思うけど、移動場面くらいはねぇ…。アナログスティックの使い加減で変わるとか、×ボタンで変わるとかだけど、基本の動きが遅すぎると思う。

2章 音楽編〜バラード調にびっくり〜

今回主題歌はエブリリトルシング。シリーズとして異例のバラード調。結構好き。BGMについてはさほど印象に残ってないという点ではデスティニー・エターニアに並んで低いと思う。ただ四星戦やユリスの領域戦闘BGMは良かったかな。でも残ったのはそれくらい。

…以上、音楽はレビュー恒例のほぼスルー状態で(笑)

3章 キャラ解析編〜スペクタクルズがない不思議〜

…ええ、今回はスペクタクルズがないのですよ。しつこく戦闘を繰り返して少しずつ埋めていくパターン。どうせ戦闘を楽しむものだから苦痛はなかったですよ。つーか、何度も戦って分かっていくっていうのが本当だと思うし。

1.ヴェイグ・リュングベル

シリーズ通して、つーか主人公としてこれだけクールだとちょっと問題ではなかろうか?…いや、シナリオ上に置いてはこの無口な主人公なゆえに色々交錯していいカンジにはなっていたんだけど。主に戦闘時の音声に問題があったと思うんだよね。テイルズの戦闘ってリニアモーションもそうだけど、同時に「喋りまくる」というのもウリでしょ?そこにあまり喋らないキャラを主人公=一番使いやすいキャラにしちゃったのはどうにも失敗くさい。つーか、勝ち鬨もそうだが、掛け合いも含めてよく聞こえない。なまじティトレイがよく喋るから…ね。普段無口なジューダスですら同じ技ばかり出してたら「バカの一つ覚えだな」ってツッコミ入れたよ?(笑)

主人公だけあって戦闘での使い勝手はそれなり。絶・霧氷装の使い勝手が抜群。これのHP回復力が高いので、ラッシュゲージを一番下げて使ってればHPも保てるし。

2.マオ

ある意味では今回一番の萌えキャラかもしれん(笑)。ティトレイが来るまではマオがパーティーの清涼剤。

戦闘ではガスティーネイルさえ唱えさせておけば問題ない。手前ラインに敵を押しやれば後はもうこっちのものですから。F・フレイムもかなり使えるので、実質後衛のエース。

3.ユージーン・ガラルド

アンチいのまた派の俺にとって、今回の心の砦。だって獣なら藤島もいのまたもあまり変わらないもん(笑)。なおかつオッサンであり、それが俺のユージーン評価を高めてます。

ところで、ユージーンはオートにしておくとやたら敵陣に切り込んで行きすぎな気がします。あれだけHPがあるのにすぐなくなる。フルHP勝利はコイツがいると遠のく。少なくとも俺の場合は。しかしながらヒルダとの秘奥義の掛け声がカッコよくて結構使った。

4.アニー・バース

なんだかんだで戦闘に欠かせないキャラなのにヒロインになりきれなかったのは立場的にかわいそうだと思います。クレア、アガーテというシナリオの根幹に触れる存在がNPCとはいえパーティーに加入しちゃったために、この二人に食われちゃったかなと。アニーのパーティー加入理由もシナリオの根幹に触れてるものだったのにねぇ。ただコイツは萌えキャラとかそういうのではないな。そこもマオに譲っちゃったら、キャラとしての価値はどこにあるんだろう(笑)

やっぱり、アニーは重要だよ。何だかんだ言って。くどいようだが、急にシステムが変わって戸惑ってしまったのが大きいかな。慣れれば慣れるほどアニーの重要性が分かる。つーか、これでいて攻撃力はチームナンバー2だったりする。細腕繁盛記ですな。

5.ティトレイ・クロウ

主人公が喋らない分をきっちりカバーしていた勝平は見事だと思います(笑)。ヴェイグとティトレイの「夕日の沈む海岸線、男二人で殴り合い」(←鳳ボンバーであったネタのパロディ。誰が分かるんだ?)のシーンはなかなかに良かった。普通に戦闘画面に入ったのもね。

ティトレイは分かりやすく言うとプレセアの正反対。スピードと手数で勝負。FG回復力が高く、奥義も出しやすいので操作性は悪くないが、いかんせん打撃なので間合いが狭いし、打たれ弱いので敵中に飛び込み辛い。HP回復手段が乏しい今回はあまり操作向きじゃないかも。しかしヴェイグ・ユージーン・ヒルダと口数の少ないキャラが多い今回はティトレイの存在意義はとてつもなく大きいのです。

6.ヒルダ・ランブリング

…いやぁ、勿体無いね。これが藤島デザインだったら耳とかで物凄い萌えキャラになってたんだろうけど。ぐはぁ。

個人的にはマオより使ってたんだが、実際の使い勝手はマオのが上かな。つーか、属性の違いがはっきり出ているので使い分けると良いのかもしれんが、俺はその入れ替えすら面倒くさがる人なんで(爆)。L・ソーサリー覚えると強くなります。しかし、ヴェイグ・ユージーン・ヒルダと戦闘に出した時の暗さはどうにかならんもんかね…。せっかくのウリが台無しだよ。

7.クレア・ベネット

「美女」という設定ですが、あまり美女に見えないのは俺の気のせいですか?(爆)ベルサスでの演説はシナリオ中1,2を争うベストシーン。

8.アガーテ・リンドブロム

…俺にはクレアよりアガーテのが美人に見えますね。リバースはヴェイグとアガーテの成長物語だったような。クレアは最初から人格者だったんであまり印象に残りませんでした。まぁアガーテは最後の演出で価値が上がっちゃったんだけど。

9.ミルハウスト・セルカーク

今回の黒幕はある意味コイツ。この恋愛マニアが(笑)。お前が不用意な発言さえしなきゃ、事の発端すらなかったんじゃないか。リバースの根底はミルハウストとアガーテの痴情のもつれなんです。間違いない。

10.王の盾・四星(ワルトゥ、ミリッツァ、サレ、トーマ)

まぁコイツらについては次のシナリオ編で語るとして、とりあえずこの4人は好きですよ。戦闘BGMカッコいいし。

4章 シナリオ編〜テイルズオブシンフォニア延長戦〜

さて、毎回問題点山積みのテイルズシナリオ。今回は…つーか今回も?

1.俺はこれを「電波少年現象」と名付けたい

見出しに書いたように、大雑把に見るとシンフォニアの延長だったというのが俺の率直な感想。今回の展開も「種族」を基本にした種族間の「対立」や「偏見」とか、そういうの。これってシンフォニアでも見た系図だと思う。それでもゲーム前半はユージーンとアニーの関係や、アガーテの思惑を中心に展開されて見所はあった。しかしシナリオ後半はうって変わって種族問題が表に押し出されて、見ていて面白くなかった。つーのも、その「原因」っていうのが、「思念」とか「潜在意識」とか不確定なモノに委ねられていたからな気がする。これがシンフォニアの時はジーニアスやリフィル、そしてミトスたちの生い立ちや考えがシナリオ上で展開されたから違和感なく入り込めたんだが、今回はプレイヤーに大雑把な「設定」と「説明」が与えられただけ。そんな状況でシナリオに入り込めというのが無茶な話じゃないかと。「気付いたら」ゲオルギアスが出てきて、「気付いたら」ヒューマとガジュマが争っていて、「気付いたら」ユリスが出てきた。本当「気付いたら」だもん。説明も後付けばかりだし。しかもユリスなんか全く姿形がないまま最終戦だったからね。意味分からんっていうの。

こんな展開で何らかの感情を抱けって言われても、俺にはムリですわ。途中でいくつかの名シーンは確かにあったけど、そういったイベントをもう少し絡めなかったのかな?ベルサスでのクレアの演説ミナールでのヴェイグとティトレイの殴り合い。この2つはゲームのシナリオにおいて多大な貢献をしたのは確かだよね。

元々、テイルズのシナリオには「感動」なんてなかった。それはファンタジアでもそうだったかもしれない。ファンタジアのシナリオが良いっていうのは、感動とかそういうのは別次元の話だったように思う。ダオスが自分のやり方を貫いたが、それがクレス達の世界においては相対するやり方だった。けれどもそこには確かに「正義」があった。ファンタジアはそういう物悲しい雰囲気が良かった。シナリオ途中でアーチェがダオスの考えに気付きつつあるイベントが入っていたし、とにかく「見せ方」が巧かった。しかし今ではテーマも壮大だし、何か実世界に通じる物があったりして目に見える感動のみを追及してる気がするんだよね。俺が「電波少年現象」っていうのはそこ。電波少年の初期は普通に下らないことばかりやっていたが、そこには確かに製作側のプライドがあった。だけど猿岩石のヒッチハイクあたりから方向が変わっていったからね。それとダブるんですよ…。シナリオの方向性が変わりつつある…。

2.薄っぺらな相関関係

次に言いたいのはキャラ同士の繋がりが今回は物凄く薄っぺらだったこと。まぁ味方同士に限ってはそんな事ないけどね。途中できちんとイベントが挿入されてるし。ヴェイグとティトレイの対称的な性格の二人の友情イベントや、最後までもつれたユージーンとアニーのイベントは見事だった。薄っぺらだったのは味方同士ではなく、味方と敵勢力の人間関係。ユージーンとワルトゥ、ヒルダとミリッツァ、ヴェイグとサレ。特にこの3組の関係については全く意味不明。イベントでこのキャラ達の間に何らかの感情が渦巻いたのは分かるんだが、それだけ。それ以上の展開は全くない。

ユージーン×ワルトゥ
→元・王の盾隊長と現四星のリーダー。まぁこの2人はまだイベントがあったほうだが、和解した時(獣王山での戦闘後)の会話は物凄く陳腐。ワルトゥ初登場時のイベントで交わされても問題ない会話で、その時に和解できたくらい。最初からユージーンとワルトゥの間には信頼関係が出来上がってたから、よしんば初登場時に和解できなかったとしても、はっきり言ってバビログラードでの戦闘後には和解できてた。それくらい獣王山での会話は無意味だったように思う。

ヒルダ×ミリッツァ
元・王の盾構成員と四星。ハーフという繋がりがあり、ミリッツァ初登場時のイベントで何らかの関係があったのは確かなんだが、和解した時(獣王山での戦闘後)の会話は物凄く陳腐。つーか、ユージーンとワルトゥの和解に便乗しただけ?ハーフ差別に苦しんだこの二人がどのような関係をもって繋がっていたのかはシナリオ上ほとんど描かれておらず、二人の会話からちょこっと分かるだけ。ミリッツァの過去が描かれてない以上、こっちには彼女をどう捉えていいのか分からず終い。少なくとも、ヒルダは自分を取り巻く環境を変えようと頑張っていた。それが逃げであろうとも。

ヴェイグ×サレ
実質、ヴェイグからサレに対する感情はないと思うんだが、サレは明らかに敵対心を持っている。カレギア城や獣王山での戦闘後のやり取りから分かるように、明らかな「価値観」の違いから激しい敵意を持っているのは分かるからね。問題なのはその価値観=「ガジュマとヒューマは共存できない」っていうのを、彼がどのようにして持ったか、という点。それは今回のシナリオ展開上絶対触れないといけない事だった。サレがそう思うに至った「過去」さえイベントに取りこんでおけば、シナリオ全体に対する考えが変わったのは確実だと思う。サモンナイト3のビジュは結局悪者のまま終わりましたが、彼の価値観に対するフォローはきちんとありました。それがただ単にギャレオの口から語られただけのもので、イベントというのはあまりにもおざなりだったかもしれないけど、たったそれだけでもビジュに対する同情というか、考え方に同意できた。サレにはそれすらないまま、トーマと心中。サレとトーマの間にも何らかの思惑や繋がりはあったハズなんだが、結局かませ犬以下の存在でいてもいなくても良かった。四星で必要だったのは実質ワルトゥとミリッツァだけ。サレとトーマは頭数合わせにしか見えませんでした。

…要するに、敵サイドの事ももう少し掘り下げるべきだったと。メインテーマにちょこっと絡めただけの存在でしかない。例えば、「サレ」の役割は「サレ」じゃなくても良かった。サレがああなっている理由が分かるイベントがないから、思念とかに影響されてるその辺りをウロついてる人と一緒だもん。

3.黒幕・ジルバ

さて、準ラスボスでもあるジルバ。コイツの目的が分かりません。シナリオ序盤から暗躍していたということは、思念とか関係なくヒューマを根絶やしにしようとしてた…ということになるんだが、その理由がないんだよね。結局さっきも書いたことなんだけど、ワケが分からないうちに戦わされてた感が渦巻いてるんですよ。ゲーム全体として。いくら戦闘が楽しければいいとはいえ、ここまで目的が曖昧だと何だかねぇ…。

4.物語後半のおつかいイベント

リバースではアドベンチャーゲームの要素が多く入っていた。街の人から情報を集めて、それを入力する必要があったり。それは別にいいんだが、物語後半のラジルダ壊滅以降の世界たらいまわしイベント。「各地の様子を見てみよう」と回らせられるんだが、結局どこでも同じ様子だし、この対立状態はイベントの有無に関わらず街中に現れてる。そんな同じ光景を見るためだけに回ってるのは、はっきり言って退屈以外の何者でもない。しかも移動速度が物凄く遅いし。本当イラついたね。

5.隠れ里・モクラド村

禁忌とされるヒューマとガジュマの夫婦が隠れ住むためにできたモクラド村。ひっそりとあるという設定なのに、一度訪れた後にはきっちり馬車で近隣の街と行き来できるようになる。プレイヤー的には便利なんだが、シナリオ的にどうだろう?馬車があるのは確かに便利なんだよ。だけどさ、ここだけは馬車がいたらダメだと思うんだよ。…秘密でもなんでもなくなってるやん…。

6.世界がひとつだったこと

ここでもテイルズのお約束である「複数の世界を回る」というのをやめて、今回はひとつの世界のみを回る。シナリオ的に問題はないんだけど、今までが2つ以上の世界とか時間軸を回ってたからか、なんか狭さを感じちゃって…。これはサモンナイト3のレビューでも書いたけど、サモンナイトはシリーズを追うごとに舞台が狭くなってて(大陸→地方→島)、それが閉塞感を生んでいるって。今回のテイルズもそう感じちゃったんだよなぁ。

7.これ以上ないほど無意味なワン・ギンの死

…ええ、コイツが死んだ意味ははっきり言ってないですね。シナリオの大局を見れば。だってコイツの事だから、あの時いたのがガジュマじゃなくてヒューマでも見殺しにしたハズだもん。コイツの価値観は種族じゃなくてお金にあったんだから、ここでコイツが死ぬイベントは不適当だったように思う。一方、同時に発生したバルカでのミリッツァのイベントは価値があったんだけどねぇ。ミリッツァとワン・ギンを並べる事そのものが間違ってる。

8.全体として

とりあえず、戦う意味が良く分からなかったってのがあるかなぁ。いや、戦う理由はあるんですよ。何と言うか、敵が見えないのがいけないんです。四星くらいはまだいいとしても、ユリスなんかラスボスのくせにポッと出てきただけだし、その存在も物凄く不確定。途中で何をしたいのか分からなくなったよ、俺は。戦う相手が見えないもんだから、こっちも戦っててつまらなかった…ということになるのか。うまく言えないけど。ユリスに目に見える行動がないから、「世界が滅ぶ」と言われてもピンと来ない。

終章 総括及び次回作展望編〜今回は負けを認めなさい〜

…というワケで、こうやってまとめてみると、とにかく色々変わってしまったなと。TPがなくなったんでグミもなんだかピーチグミとか新しいの出てきて今までのはアップルグミしかなくなったし(効果据え置きで非売品)、スペクタクルズなくなったし…。基本的なところからほとんどが変わってしまった。それを良しとするかどうかは人によると思うんだけど…俺は正直受け入れられないですね。ワイルドアームズなんかは世界設定が変わっても基本的な世界観の部分では繋がりがあって、それを楽しむという面があると思う。過去のテイルズでもそうだった。だけど今回は本当にガラッと変えた。それがどうにも納得できないんだよなぁ。デスティニー2のレビューでも書いたけど、前作との接点を必要以上に切り捨てすぎてると思う。事の正否は別としても、フォルスゲージとか戦闘において新しいのを目指す姿勢は分かるけど、アイテムとかの面でまでシリーズの「お約束」を切り捨てる必要ってあるのかな?シナリオ編で「方向性が変わりつつある」って書いたけど、それはシナリオだけでなくシステムにも来てるんだよね。それが破滅の序曲たりえる気がして恐ろしいのですよ…。

ゲーム雑誌には「初心者にも敷居は高くない」と書いてあったが、俺にはとてもそうは思えなかった。テイルズやり続けてる俺だって慣れたのは後半になってから…というか、一度冷却期間置いてからだもん。やっぱり回復が特技使用時、というのにしちゃったからいけないんだ。これにより攻撃と防御の見極めが必要以上に難しくなったからねぇ。例えば、自分のHPが低くなったから一度下がる。しかし味方は通常通りの戦いをする。そこに本来追撃をする自分はいないんです。だからそこから攻められて傷口が広がる、といった具合。これがデスティニー2の時みたく、キャラが特技と魔法の両方を習得できるんだったら、下がっても攻撃手段があってバランスは保てたと思うんだけど。つーか、ハナっから「コンボコマンド」を切り捨ててるのも気に入らないんだよなぁ。

えっと、ファミコンプラザ2でリバースの値段がどんどん安くなってってます。今や新品で3980円。結局今回はそういう評価なんだよね。俺も今回のレビュー書いてて泣けてきたもんね。リバースは本当にダメだったんだって。それをきちんと受け入れてテイルズオブレジェンディアには頑張ってもらいたい。キャラデザインはもう決まっちゃったから仕方ないけどさ…。まぁリバース出てまだ3ヶ月程度というかつてない短いサイクルで新作発表というのはその意欲なんだと受け止めたい。次はやってくれると思います…なのよ。と、最後は俺のリバース冷却期間を支えてくれたトゥハート2ネタで締める(笑)

おまけ 俺的三大シリーズものの総合順位〜パワプロは例外〜

今回のレビューおまけはワイルドアームズ、テイルズ、サモンナイトという俺的三大シリーズものの現段階での総合順位を発表してみようかと。まずはリバースが出る前までの順位から。

1位…テイルズシリーズ
2位…ワイルドアームズシリーズ
3位…サモンナイトシリーズ

やっぱり一番はシナリオおざなりとはいえ、RPGの主要部分である戦闘が楽しいテイルズ。その次があんまり好きじゃないんだが「ターン制」を用いながらもシナリオ・音楽とが高い評価を出すワイルドアームズ。そして最後はサモンナイト。サモンナイトは正直、3でかなり評価を下げました。オルドレイクのせいで。そして次はリバース発売後の順位。

1位…ワイルドアームズシリーズ
2位…サモンナイトシリーズ
3位…テイルズシリーズ

…と、やっぱこうなりました(笑)。簡単に言えばテイルズの評価が暴落。レビュー中にさんざん書いたけど、必要以上に前作との接点を断っているのがかなり痛いんだよねぇ。シナリオが最初から期待できない分、キャラや音楽に対する比重は大きいんだけど…これも高い水準じゃないだろうし。それに引き換え、まだ出てないけどWA4は情報が出るたびに期待度が高くなってくもん。主題歌を含めた音楽もいいし。ワイルドアームズのなるけ節+麻生かほ里コンビってのはもうシリーズの「お約束」だからね。そういう基本を金子さんは分かっておられる。ちなみに、サモンナイトは良くも悪くもちょうど良いレベルで安定してるかなと。サモンナイトはキャラが重要なんで、キャラに魅力がないとゲームの評価も下がっちゃうんだよね…。


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